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「アンガーマネジメント超入門『怒りが消える心のトレーニング」から学ぶ上手な7つの怒り方とは

 皆さんは怒りが発端となりトラブルを抱えた経験ありませんか。私はあります。笑

 「怒り」というワードは一見するとネガティブですが、効用もありますよね。自己防衛に繋がりますし、感情の発露は時として問題解決に大きく寄与することがあります。自分の本気度を相手に理解してもらいやすい場面もあるでしょう。

 しかし、それと同時にデメリットも数えるとキリがありません。何故あんな物言いしか出来なかったのだろう、と後から苦しむこともしばしば。相手との関係がこじれて、修復に想像以上の労力を要することもあるでしょう。全て私自身の経験ですが…。

 その度に思うのです。もっと「正しく怒る方法」を知っていればなあ、と。そんなときに発見したのが本書です。内容はずばりアンガーマネジメントについて。

 この書籍を通じて私が最も「目から鱗!」と感じたのは、「アンガーマネジメントとは怒らないための学問ではなく、怒りそのものをコントロールするための学問である」という点です。

 怒りそのものが全て悪感情な訳ではない。怒りをコントロールできない点に問題の本質があるのではないか。そうした概念に触れることで、怒りに悩む皆さんの問題も解決に繋がるかと思います。

 今回は本書内容の中でもより実践的であると思われる「上手な怒り方7つのルール」をご紹介しますね。

上手な怒り方 7つのルール
  • 1.リクエストを明確にする
  • 2.「私」を主語にする
  • 3.自分の感情をその場で伝える
  • 4.程度言葉を使わない
  • 5.原因より未来の対策を聞く
  • 6.ゆっくり話す
  • 7.一貫性を持つ

1.リクエストを明確にする

 怒りで頭がいっぱいになっていると、自分自身の一次感情を認識できなくなってしまいます。ここでいう一次感情とは、問題の根源になっている感情のことです。

 夫婦喧嘩を例にしてみます。①妻は夫に家事をして欲しい。しかし、夫は家事に非協力的。②妻、夫に対しムカつく。この①で抱いた夫への願望が一次感情②の怒りは二次感情です。

 最も大切なのは、この一次感情に目を向けること。つまり、怒りの奥にある一次感情が何なのかを明らかとし、対処することです。「怒り」とはあくまでも二次感情なので、この感情に支配されている限り、問題の解決は期待できません。

 具体的には、「なぜ私の気持ちを分かってくれないの!?」よりも「仕事後の家事負担でとても疲弊している。あなたにも協力してほしい。」であることの方が建設的で、相手へのリクエストが明確です。問題解決に適したアプローチと言えるでしょう。

 相手へのリクエストを明確にしないまま感情をぶつけることは、相手を困惑させるばかりかあなたとの関係を避けたくなる感情にまで発展するかもしれません。そうなってしまったら互いに不幸です。絶対にやめましょう。「罪を憎んで人を憎まず」です。

 ちなみに、一次感情の問題が解決されると、二次感情である怒りも自然と和らぎます。

 自分自身、腹が立って仕方ないとき。あるいは、相手を怒らせてしまったとき。大切なことは「怒りの奥にある一次感情を探ることです。一次感情が明確になれば、アプローチすべき問題の本質も明らかとなります。後は、相手に明確なリクエストを投げかけるだけです。

 本書には書かれていませんが、このリクエストを拒絶された場合はどうすればいいんでしょうね。自分自身怒りをマネジメントし、相手の視点に立ち建設的な対話を望んだとして、相手にその柔軟性や謙虚さが欠如していたら…。直面する絶望感も一塩かと思います。そうした絶望に対応する手法を紹介した良書があれば、誰か是非教えてください。笑

2.「私」を主語にする

 怒りを上手に伝える際のテクニックとして、「私」を主語にして伝えると相手が受け入れやすくなる、というものがあります。「あなた」を主語とする「You」メッセージは、相手にとって責められているという印象を抱かせやすいです。

 前提として、コミュニケーションには4つの型があります。

  ①アグレッシブ:攻撃的に相手を責める接し方。自分の主義主張を強く訴える。

  ②パッシブ:自ら主張せず、基本的に受け身。怒りを溜め込みやすい。

  ③パッシブ・アグレッシブ:表面上は相手に従いつつ、心では反発している。

  ④アサーティブ:自他ともに尊重しつつ、具体的なリクエストを伝える。

 目指すべきは、もちろん④のアサーティブ。このアサーティブスタイルを実行する上で、本章の「私」を主語にする「I」メッセージテクニックが役立ちます。

 「I」メッセージと「You」メッセージ、それぞれの具体例を見ていきましょう。

 門限を守らない子どもに対し、自分自身の心配を伝えるとします。

 「I」メッセージでは、「お母さん、あなたのことがとても心配だったのよ」

 「You」メッセージでは、「あなたはお母さんの気持ちを分かってない!」となります。

 どちらかというと、前者の方が受け入れやすいですよね。後者だと、何だか自分の過失を一方的に責めたてられているような…。子供によっては反発心を深めてしまいそうです。

 心配事を伝えること自体、悪いことではありません。重要なのは伝え方。相手の反発心を煽り、こちらのリクエストが届かないのでは意味がありません。

 アサーティブスタイルかつ「I」メッセージで問題解決を目指しましょう。

3.自分の感情をその場で伝える

怒りを伝える上で、NGワードがあります。それは、「前もそうだったけど」「何度も言っているけれど」です。つまり、過去の出来事を引き合いに出すことは絶対にしてはいけません。

 過去の話を持ち出すことの問題点は、自分と相手で認識が大きく乖離してしまう点にあります。

 怒りを伝える側は、今回の事例と過去の出来事に共通点を見出しているため、このような物言いになってしまっています。

 他方、言われた側は、現在と過去の事象に共通項を見出せない可能性が高いです。そこで「今さらそんな話するんじゃねえよ」となります。つまり、不信感をあらわにするわけです。結果、伝えたいことが伝わらなくなってしまいます。

 したがって、過去の怒りは強調しないのが賢明です。相手の不信感を引き出さないよう、そして、素直にこちらの要望が聞き入れられるよう、話し方やタイミングには十分注意しましょう。

4.程度言葉を使わない

 怒りを伝える際のNGとして、程度言葉があります。程度言葉とは、「ちゃんと」「しっかり」「もっと」「すぐに」「適当に」「いい感じに」などの抽象的な表現を指します。仕事現場でもよく耳にするヤツですね。

 程度言葉は、しばしばすれ違いの原因となります。

 なぜなら、自分が求める「しっかり」と相手の抱く「しっかり」は定義が異なるかもしれないからです。前者が、「寸分の違いもない100%の状態」だとして、後者は「8割程度のクオリティ」かもしれません。

 こちらが「なぜ、しっかりとやらないんだ!」と言っても、相手は「いや、しっかりやったけど…」という受け止めかもしれないのです。これでは、伝えたいことが全く伝わりません。

 報告書の確認をして欲しい場面では、「書類チェックしといて」よりも「誤字脱字がないかを確認しておいて」の方が相手にとって親切です。

 「この報告書コピーしといて」だけよりも「この報告書を5部コピーしておいて」の方がリクエストは明確で相手も助かります。

 私自身、今回のようなことを新人看護師時代に感じてました。仕事上のミスの原因のほとんどはこうしたコミュニケーションの齟齬なんですよね。指示の受け手が未熟なのも問題ですが、指示を出す側のコミュニケーション手法が原因となることも少なくないです。曖昧な指示を出した後「普通なら〇〇でしょ!」と怒るより、「こういう表現で伝えた方が今回のミスを防げたかも…」と振り返る方が建設的ですよね。

 相手に要望する場合、要望する側が優勢である可能性が高いです。「優位な立場である自分がなぜそこまで気を遣わねばならんのだ!」という気持ちも分かりますが、相手に伝わらないのであれば余計にイライラを溜め込むだけです。

 心理的なすれ違いを避けるため、面倒でも6W3H(いつ、どこで、だれが、誰に、何を、なぜ、どのように、どれだけの数量で、いくらで)の表現に心がけましょう。

5.原因より未来の対策を聞く

 問題が起きた時、原因究明は大切なことだと思います。しかし、怒りを伝える場合において、「なぜ」という言葉は相手を責める印象となりやすいです。相手の能力や人格を否定することと同義です。

 また、これは副次的な作用ですが、「なぜ○○なんだ!」と伝えることは相手の悪い点に目が向きやすいため、自分自身の怒りを助長します。結果、冷静さを欠きます。

 これはあくまでも私の経験則ですが、理由を問いただしても意味が無いことの方が多いです。過去を振り返ることは、課題解決というより責める側のエゴである可能性が高い。つまり無駄。相手を委縮させ、むしろミスは増えるかもしれない。

 大切なのは過去より未来です。過去の原因を探求するのではなく、「どうすればできるのか」未来について聞くのが効果的です。

 こちらからのリクエストが明確な場合は、「今度からこうして欲しい」と伝えることも有効です。また、そうして欲しい理由も付け加えることができれば言うこと無しですね。

 これも看護師あるあるなんですけど、「自分で何か対策を考えろ!」という指導は、あまり優しくないですよね。相手に選択権を明け渡しているようで、威圧感しか伝わっていない、という最悪な状態です。こういうこと言う人の多くが自分の中に最適解を持っていないことが多いです。故に丸投げ。これは指導といえません。

 被指導側がひな鳥のように口を開けて待ってるだけってのも良くないので、線引きは非常に難しいのですけど、共に伴走するぐらいの気概が指導者(上司)には必要だと思います。何事に対しても、パートナーと共に未来を見据える寛容な人でありたいですね。

6.ゆっくり話す

 上記までは話す内容を中心に語ってきましたが、話し方も非常に重要です。ゆっくりと低い声で話すと説得力が増します。

 興奮していると、早口にまくし立ててしまいがちです。自身の早口がより怒りの感情を煽ります。興奮しているときこそ、意図的にゆっくりと話しましょう。徐々に感情も落ち着いてきますし、堂々としたたたずまいや説得力も現れてきます。感情は挙止動作である程度コントロールできます。

 その際は、相手にまっすぐ向き合い、視線を逸らさないように。にこやかな表情でボディランゲージも扱えれば、相手も落ち着いてあなたの言葉を受入れられるでしょう。

 嫌悪感丸出しの表情や腕組みは絶対にNGです。話す前から相手を拒否する態度に他なりません。

 互いに不快な思いをしない話し合いができると理想的ですね。「北風と太陽」の太陽を目指しましょう。

7.一貫性を持つ

 怒りの基準に一貫性を持たせましょう。「怒りっぽい」「気分屋」と思われる最大の原因は、怒るルールがぶれることにあります。そうしたルール違反は、不信感に繋がります。

 怒られる基準が分からなければ、対策しようがありません。「あの人とは距離をとろうかな…」と思われて終了です。まあ、自然な力学ですよね。ストレス貯めたくないし。

 ただし、守られるべき方針が破られた場合は、怒りを伝える蓋然性があります。明確な基準を設け、それがないがしろにされた際には苦言を呈するというメリハリが大切です。

 あるときは怒られない、あるときは怒られる、という基準のブレは「自分の機嫌で怒る人」との評価になりかねません。十分注意しましょう。

最後に

 いかがだったでしょうか。

 私自身、本書から学ぶ点が多数ありました。かくいう私も怒りっぽい性格だったのです。そうした性格のせいでトラブルに見舞われることもしばしば。そんな自分を変えたい!と思ったとき出会ったのが本書でした。

 怒りをコントロールできれば、コミュニケーションは円滑で快適なものとなります。結果、自分を取り巻く環境は劇的に変わるのです。

 アンガーマネジメントを意識するようになってから、両親や旦那、友人、仕事仲間との繋がりがより強固に、より素晴らしいものに変化したという自覚があります。

 この手記に目を通した皆さんにも、その効用を感じてほしいです。本書にはここで書いた以上の学びがまだまだあります。ご興味があれば、是非手に取ってみてください。

 まあ、今回はこの辺で!ではでは~。