おすすめ本の一つ,本多静六さんの「私の財産告白」を解説します.
忙しい方のために,本書を3行で説明すると以下のとおりです.
- 「勤倹貯蓄」と「堅実な投資」に励むべし
- 人生の最大幸福とは「職業の道楽化」である
- 「人生即努力・努力即幸福」
忙しくない方は,以降の解説もどうぞ…(笑)
そもそも本多静六さんってどういう人?
本多静六(1866-1952年)は,昔活躍されていた大富豪です.東京帝国大学農科大学(現.東大農学部)で教授職を務める傍ら,自身の造林学や金融知識を生かし,巨万の富を築きました.
ここまで聞くと,”なーんだ,エリート成功マンの資産アピかよ”って感じですが,様相は全く異なります.
本多さんは,定年に際しその資産の多くを寄付.自ら簡素な老後生活を選択します.その後は最低限の証券,不動産を元手に再度資産形成.しかし,老後安泰を確信した最中,日本敗戦により資産の多くを国に没収されます.それでも,静六爺さんは挫けません.「時勢には勝てない」と,この理不尽を受け入れます.
その後も愚直に自身を戒め,生活に困らないだけの資産を作ります.最終的には「油断しなければ120歳まで生きられそうだなあ」的な感想を残してます.もし本多さんが現代にいたとしたら,年金支給額減少,円安,物価上昇などのニュースにも動じず飄々としてそうですよね.
本書はそんな本多静六さんの人生哲学が凝縮されたような内容になっています.この本を読めば,現代を生き抜くヒントを得られるかもしれません!逆境に鬼強い本多静六さんの投資哲学,人生哲学を共に学びましょう.
勤倹貯蓄と堅実な投資
本多静六さんがまず始めたのは”貯蓄“です.そんな初歩的なこと!?なんて感想が聞こえてきそうですが,まずは貯蓄.「バビロンの大富豪/ジョージ・S・クレイソン」にも同様の重要性が語られています.”まずは収入の1/10″ってやつですね.
本多さんが提唱する貯金法は,「バビロンの大富豪」のさらに上を行きます.それは,通常収入は25%,臨時収入は100%貯金,というもの.本多さんは,月給58円(現在レートで約22万円ほど),それも家族9人を養いつつ,これを断行していたというのだから驚きです.私が妻なら暴れます.
本多さんは貯金についてこう述べています.
貯金の問題は方法の如何ではなく,実行の如何であると.
つくづくお金は扱う人の人格や思想を投影するコンテンツだな,と思います.私はこの言葉にたいそう痺れました.
また,貯金で最も障壁となるのは虚栄心とも述べています.
自分の値打ちが銀もしくは銅でしかないのに,暮らしの方は金にしたい.金メッキでもいいから金に見せかけたい.そうした虚栄心が節倹を妨げる.とのこと.
時代を問わず通用する金言ですよね.
蓄財の次は,「堅実な投資」について.ここでも静六さんの金言が炸裂します.当時,証拠金取引がとても盛んだったようです.現在で言うところの先物,信用,FX,オプション取引等々でしょうか.静六さんは,これらを”投機“とし,絶対にやらないものと断言しています.これについては,私も100%同意です.どうせやるなら市場参加者全員が豊かになりうるプラスサムの”投資”が良いですよね.
また,本書には”リスク分散”についても述べられています.三十種以上にわたる業種の優良株を選定したとのこと.20種以上の保有は理論上TOPIXなどインデックスに近似するそうですね.当時は難しかった分散投資も現代なら容易なので,良い時代になりました.当時の金融商品選定はさぞ大変だっただろうな.
余談ですが,本多さんが不動産投資(土地山林)で成功したのは,自身の専門領域だったという要因が大きいと思います.門外漢のまま投資するのは却って危険ですね.1にも2にもまずは勉強です.
特に不動産投資は今も昔も上級者の投資.知識がないまま乗り込むと,悪徳業者の餌食にされます.過去勤めていた病院のドクターも何人かワンルームマンション投資のカモにされてました.そのとき感じたのは,マネーリテラシーと勉強偏差値は相関しないのだということです.とくに医師は騙されていると認めることがプライドに障るのか,泥沼化しがちな気がします.ま,悪徳業者が一番悪いんですけどね.アマギフなどをチラつかせながら,学会に度々現れるクソ業者は,今すぐ滅んでくれ!!医師の皆さんはくれぐれも気を付けてね.
人生の最大幸福「職業の道楽化」
本書タイトルから,おじいちゃんによるお金の話が延々と語られると思いがち.しかし,半分は静六爺さんの人生哲学が述べられています.この”社会学”が非常に素晴らしい.
中でも私が感銘を受けたのは,「職業の道楽化」というキーワードです.
静六さん曰く,経済的な自立が強固になるにつれて,勤務にも励みがついた.いよいよ面白く人一倍に働いた.とのこと.
この言葉は今のFIRE文化の根底にある核心を感じます.FIREを志す方の多くが仕事へのネガティブな感情を動力にしているのでは.(間違っていたらすみません…)しかし,もし働くことが道楽のように人生を豊かにするものであったなら,FIREがこれほど流行ることは無かったと思うのです.お金があれば,例え報酬が少額でも続けるでしょう.不愉快な職場にしがみ付く必要もない.
静六さんが言いたいのは,経済的な自立が労働に純粋な動機をもたらす,というたった一言に集約されるかもしれません.私自身,経済的自由には程遠いですが,”職業の道楽化”を人生の指針に据えたいと思いました.
また,静六さんは職業の道楽化を達成する方法として,いついかなる場合も本業を第一とし専心すること.とも述べています.この言葉は,何も副業を否定しているわけではありません.静六さん自身,執筆活動や投資,公園設計などゴリゴリに副業していますしね.しかし,これら業務により多忙を極めたとしても,大学での教育活動,研究活動には余念が無かったようです.まさに一流の職業人ですよね.
私の身の回りでも,一流だなと感じさせる人は,「一体この人はいつ寝てるんだ?」と思わせるほど副業にも本業にも真面目で結果もクオリティが高いです.能力の高い人がエネルギーを持て余した結果,副業に挑戦するのか.あるいは,副業などの経験から,結果として職業人としての能力を高めたのか.それは分かりませんが,本業で一流であれば,副業がより評価されそうですよね.是非そっち側の人間を目指しましょう!
「人生即努力・努力即幸福」
最後にご紹介する言葉は,「人生即努力・努力即幸福」です.この言葉好きです.やはり成功を引き寄せるには,即時に行動することがカギとなるようです.
私の愛読書「仕事は楽しいかね?/デイル・ドーテン」とも重なる部分があります.挑戦することで短期的にうまくいかないことはあるでしょうが,必勝法ならぬ必敗法の知識を手に入れたとも言えます.失敗を経験すれば、その手法を行使することは以降無いでしょう.仮に上手くいったとするのであれば,その手法の価値が一段高まるだけのこと.いずれの結果も,挑戦の価値があったと言えます.
即時に行動・挑戦することこそが成功や幸福を即時に引き寄せる唯一の方法である.私はこの言葉から勝手にそんなニュアンスのメッセージを受け取りました.
最後に
いかがだったでしょうか?
本書は本多静六さんの人生とその哲学に溢れた一冊になっています.本多さんが生きた時代と今とでは,社会が取り巻く環境は全く異なるでしょう.しかし,もし本多さんが現代にいたとしたら,きっとホリエモンさんや前澤友作さんと肩をぶつけ合いながら,この社会を渡り歩いていたのでは,と思うのです.
時代に古き新しきはありますが,考え方や物事の捉え方には,いつの時代も通用する普遍性があるはず.読めばきっとあなたも本多さんの人生に興味を持つでしょう.興味があれば是非!
以上,終わり!