皆さんはタルムードという書物をご存じでしょうか。タルムードとは、およそ1500年前に成立した物語集です。内容は寓話。イソップ童話のように、教訓や風刺を織り込んだものとなっています。
タルムードが今なお現代人の指針として注目される大きな要因の一つとして、ユダヤ人との深い関わりがあります。
ユダヤの母親は、幼い子供にタルムードを何度も繰り返し読み聞かせるそうです。そして「あなたならどう考える?どうする?」と幾重にも質問を投げかけます。するとこれら教訓のシャワーをくぐった子どもたちの中に、リスク分散やヘッジなどビジネスにおける不可欠な概念らが自然と溶けていきます。
この一連の教育の中にユダヤ人を世界的な偉人へと押し上げるヒントがあるのでは、と考えられています。以下に挙げる人物は全てユダヤ人です。
イエス・キリスト
アルバート・アインシュタイン
スティーブン・スピルバーグ
ラリー・ペイジ
まさに錚々たる顔ぶれです。また、ユダヤ人は世界人口のおよそ0.2%に過ぎないが、ノーベル賞受賞者の20%はユダヤ人との指摘もあります。迫害に曝されつつも、それらを跳ね返してきたユダヤ人の知力・経済力はまさに傑出しています。その力の源泉ともいえるのがタルムードです。ユダヤ人の肩に乗った気持ちでタルムードを学び、高い視座を手に入れましょう。
今回紹介する寓話は”金の冠をかぶった雀”です。このお話を3行で説明すると、
- 王様が自分の命を助けた雀達にお礼の品を渡そうとする。
- 雀は金の冠を希望する。
- 金の冠により目立ちすぎた雀達が狩られまくる。
といった感じ。察しの良い方は、これだけですでにこの話の本質が分かってしまってしまうかもしれませんね。では、以下の解説いってみましょう。
王様が自分の命を助けた雀達にお礼の品を渡そうとする。
ここでいう王様とは、ユダヤの王ソロモンです。ある日、ソロモン王は鷲の背中に乗り彼方の国を目指し飛んでいたそうです。(いきなりファンタジー全開かよ…とツッコミたくなる気持ちはヤマヤマですが聞いてください。寓話ですからねコレ。)
しかし、体調が優れないソロモン王は鷲から落ちそうになってしまいます。この様子をたまたま発見した雀さん達。すかさず何百羽と集まって、王が落ちないよう支えました。
このことに感激したソロモン王が雀達に言います。「お礼にお前たちが欲しい物を何でもあげるぞ」と。
ここまでが、このお話の導入です。あなたならお礼の品に何を選びますか?
雀は金の冠を希望する。
結論から言うと、雀達は金の冠を希望します。「王の金冠をかぶった状態で飛んだら、さぞ誇らしくてカッコいいだろう」という理由。
これを受けて、王は言います。「あまり良い考えではないな。もう一度考え直してはどうか。」しかし、王冠を諦められない雀達。強情に粘り、遂には王の了承を得ます。
雀達に与えられた選択肢はそれこそ無限にありました。食料や身の安全を守る場所。それら生きた利便性を実体を持たない見栄が上回ってしまったわけです。虚栄心に支配された雀達はこの後、どうなってしまうのでしょうか。
金の冠により目立ちすぎた雀達が狩られまくる。
もう既にオチが分かってしまっていますが…。雀達は猟師に狩られまくります。雀を狩れば金の冠が手に入るのです。狙われるに決まっているでしょう。王が「良い考えではない。」と言った真意はここにあったのですね。
しかし、雀達はそのことに気づくのが遅かった。国中の雀は狩られ、遂には5羽にまで縮小。
雀達は自身らの過ちに気づくとともに、身に付けていた王冠を取り外した。以降は徐々に平成を取り戻し、何年もの歳月をかけ雀は元の数にまで回復した。これにて物語はおしまい。めでたしめでたし~。
この物語が伝えたいこと
この物語におけるメッセージは「財産を見せびらかすと身を滅ぼすぞ」です。
雀達の”王冠をかぶりたい”という願望はけして責められるものではないと思います。誰にだって多少の見栄や虚栄心はあるでしょう。雀達の過失は、王冠を見せびらかすことによる代償を理解していなかった点にあります。
人間社会における王冠とはつまり、高級車、高価な腕時計、豪勢な食事、莫大な邸宅などですね。この物語の本旨は、それらの所有を認めていないわけではありません。ただ一点。「見せびらかしても良いことないからやめとけ。」です。
その代償を理解できている、もしくはそれら代償を跳ね返す力を持った強者なら問題ないはずです。しかし、雀のような弱者が自分の実力以上の虚栄心を世界に発信するのは、危険性が伴います。
その財産を狙った悪い奴らが寄ってくるかもしれません。寄ってくるだけならまだしも、根こそぎ奪われてしまうかもしれません。今回の話で雀は命ごと奪われてしまいました。自分たちの器に見合わない財産をひけらかしたばっかりに身を滅ぼしたのです。
ユダヤ教において、弱者は「目立たず」「少しずつ」積み上げていくことが重要であると語られています。長い歴史の中、弱者を経験してきたユダヤ人自身がこれを忠実に体現しており、非常に含蓄に富んだ教えといえます。実社会にも当てはまる実践的なリスク管理ですね。
最後に
いかがだったでしょうか。”金の冠をかぶった雀”非常に興味深いですよね。
あなたの周りにも自分の所有物や境遇を見せびらかしてしまう人いませんか?もしかして、あなた自身がそうではありませんか?もし、そうなら狩人が寄ってくる前にその姿勢を改めるのが先決です。
成功者は常に人知れず地道に少しずつを積み上げています。それらを見せつけることなんてしないので財産を狙われることもなく、平穏な日々を享受しています。つまり、王冠以上の宝をすでに携えているわけです。
誰しもが他人からチヤホヤされたいし、自分自身を特別な人間と評価してもらいたい。しかし、実体とはかけ離れた虚栄を追い求めることは、結果として身を滅ぼす一因となるかもしれません。
評価の軸を世間体に委ねるのはやめましょう。王冠にも劣らない成功者の価値観を身に付けましょう。そんな教えをこの物語は授けてくれます。
ま、今日のところはこんな感じで。私も成功者になりたいなあ~。ではでは。